私は病院で入院患者さんのリハビリに携わる理学療法士という仕事をしています。
体を動かすことを全般を、専門の仕事にしています。
今日は運動が嫌いで苦手な人のために誰でもできるお勧めの運動をご紹介します。
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運動が嫌い・苦手な人にもお勧めの、健康にいい運動は?
結論から言いますとそれはウォーキングです。
もっと平たく言えば散歩ですね。
どうでしょうか?これなら誰でもできますよね。
ただ歩けばいいのですから。
入院患者さんの退院後の運動指導でも、まず第一にお勧めしているのは散歩・ウォーキングです。
実際にリハビリでも歩くことを中心にリハビリすることがとても多いです。
ジョギングとか、走ったりしなくてもいいの?と思うかもしれませんが、特に走る必要はありません。
目的が健康の為であれば歩くことで十分です。
ジョギングは結構な負担が身体にかかります
良く健康目的でジョギングをされている方がいらっしゃいますね。
しかし、走るという行為は体に結構な負荷がかかります。
私たち人間は普段から走り回って生活しているわけではなく、歩いて生活していますね。
走るという行為はあくまで常態ではなく、急ぎの時やスポーツ競技が目的で行われます。
確かに走ることによって、持久力や筋力が向上することは間違いありません。
しかし運動には程度があり、その人その人で適切な負荷というのは違います。
20代の人と60代の人では、同じ運動でも楽に感じたり辛く感じたりしますよね。
運動する上で大切なのは運動負荷
その人その人で体力も筋力も健康状態も違います。
ですから前述のように、運動が体に良いからといって、一概に走るのは得策ではありません。
大切なのはその人に合った適切な運動負荷で運動を行うという事です。
このように考えた時、多くの人にとって走るという行為は負荷の高い行為になります。
ですから、身体に負担をかけ過ぎない無難な運動の選択としては歩くという行為がお勧めです。
運動負荷の重要性
リハビリは、病気やケガで入院した患者さんに対して行います。
入院すると大抵皆さん寝ている時間が増えますので、体力も筋力も衰えます。
ですから入院中に体がこれ以上弱らないように、また退院して元の生活に戻れるようにリハビリ(運動)を行って体力や筋力の回復を狙っていきます。
この時に、その人その人に合った適切な運動負荷でなければ、病気やけがで体が弱っている人にはかえって負担がかかり、場合によっては治りが遅くなったり悪化させてしまうことも考えられます。
ですから、リハビリでは運動負荷を必ず重要視します。
この観点からも、健康の為に運動をしたいと考えている人に対しては、身体に負担がかかり過ぎない適度な運動が理想だと言えます。
どのくらいの運動負荷が身体に一番いいのか?
リハビリの中で運動負荷を設定するときに、具体的に血圧や脈拍などを参考にすることもありますが、日常生活でこれらを常に意識することは難しいと思います。
そこでお勧めするのは自覚的運動強度です。
我々はボルグスケールという言い方もしますが、その人の自覚を基準に運動の負荷を設定するという事です。
引用元:健康長寿ネット
そしてこの表で言うと、11~13の範囲「最大酸素摂取量(%)の40~60%」がもっとも体に理想的な運動負荷と言われています。
ですから言い換えてみると、運動している時に「楽である」から「ややきつい」の運動負荷で運動することがもっとも体に良いとされています。
参考までに時間ですが、ウォーキングであれば30分ぐらいできればとても理想的と言えますね。
ここで一つ注意しておきますが、これらはお医者さんに健康上運動しても問題の無いと判断された人に適応されるものです。
ですから、人によって運動制限がある方は主治医の先生に一度相談したうえで運動することをお勧めいたします。
厳密に心拍数で運動負荷の基準を決めたい人へ
引用元:健康長寿ネット
厳密に心拍数でも運動負荷を管理したい方へ、目安となる心拍数の数値表がありましたのでこちらもご参考ください。
この表は年代ごとの適切な運動負荷である心拍数を示しています。
しかしより厳密に設定したい場合は以下をご参考ください。
私は循環器を専門にリハビリをしていますので、特に心拍数を使って運動負荷をコントロールしますが、その際に用いるカルボーネン法と呼ばれる数式があります。
この計算に用いるのは、対象者の年齢と1分間の安静時心拍数です。
まず年齢に応じた最大心拍数を算出します。
これは「最大心拍数=220-年齢」であり、例えば50歳の人出れば220-50=170となります。
ここからその人に適切な運動負荷(上限の心拍数)を設定します。
運動時の上限心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×運動強度(0.6~0.7)+安静時心拍数です。
ちなみに運動強度の係数0.6~0.7は、先ほどのボルグスケールの11~13にあたる運動強度60%~70%と同じです。
例:50歳、安静時心拍数70の人の場合
では50歳で安静時心拍数が70である人の運動強度を算出してみます。
ここでは運動強度の係数を0.6にします。
すると計算式は以下のようになります。
運動時の上限心拍数=(170-70)×運動強度(0.6)+70
よって50歳で1分間の安静時心拍数が70である人の、運動時の上限心拍数は130となります。
このようにして我々リハビリセラピストは、入院時の患者さんの適切な運動負荷を把握したうえで、リハビリを行っています。
心拍数の測り方
一般的には、手首の親指側を通る橈骨動脈で測って頂ければと思います。
指先が一番感度が良いとされていますので、橈骨動脈に対して人差し指から薬指までを乗せてあげると脈が感じられると思います。
1分間真面目に測ってもいいのですが、臨床上では急ぐために、30秒測ったものを2倍したり、10秒測ったものを6倍して把握したりもしています。
ここまで、心拍数をもとに運動負荷を算出する方法と心拍数の測り方について解説しました。
健康の為に運動したい人、運動が苦手な人へのお勧めの運動まとめ
運動は一般的に、やりすぎが一番体によくないです。
次が運動不足、運動不足で病気にかかりやすくもなります。
そして一番いいのは適切な負荷での運動です。
そして運動が苦手な人や、健康の為に運動したい人にお勧めの運動は、負荷がかかり過ぎないウォーキング(散歩)です。
余裕がある人は競歩ぐらいの速いスピードで歩いてみても良いでしょう。
ランニングでも適切に心拍数がコントロールできればやって頂いても構いません。
しかしランニングとなると、場合によっては心拍数が上がり過ぎて、体に負荷がかかり過ぎますので注意してください。
そういう意味でもウォーキングが一番無難であると言えます。
心拍数での運動負荷算出方法もお伝えしましたが、ウォーキング程度では脈はそれほど上がりませんので、やり易さを考えてもボルグスケール(自覚的運動強度)を参考に運動をして頂ければよいと思います。
ボルグスケールでは本来、瞬間的な運動強度のみを表しますが、これに時間の概念も含めて「楽である」から「ややきつい」の範囲で、ご自分に合った運動量を決めていただければわかりやすく管理できると思います。
「このくらいのスピードでこのくらいの時間の運動であればちょっときついくらいかな」などという風にです。
頻度は毎日がベストですが天候や体調もありますから、1日おき、または週5ぐらいできるのが理想です。
ですからわざわざ運動の時間を設けるというよりも、普段の生活の中で歩く機会を設けて実施できることが、習慣化にもつながり一番お勧めの方法だと言えます。
この記事が何かの参考になれば幸いです。