理学療法士がライフスタイル提案

寝たきり予防は、転ばぬ先の「杖」よりも、まず筋力が大事!

この記事ではどうやったら将来の寝たきりを予防できるか、リハビリの専門職である理学療法士の私が簡単に解説します。

私は普段急性期の総合病院で入院患者さんのリハビリを担当しています。

そのなかで退院後の生活習慣・運動指導なども行っていますのでお役に立てる内容だと思います。

まずはじめに、皆さんはロコモーティブシンドロームという言葉を知っていますか?

これは通称「ロコモ」と言われ、運動機能の障害を意味します。(運動機能とは体を動かす為の機能です。筋力やバランス感覚など)

この言葉が最近巷で聞かれるようになってきました。

どうやら国がメタボリックシンドロームに続けてこの言葉を一般認識させたいようです。

ではなぜ今「ロコモ:運動機能障害」が注目されているのでしょうか。

健康寿命と平均寿命にはかなりの差がある

医療技術が発達し、日本は世界でも有数の長寿大国となりました。

高齢社会という意味では世界でも類を見ません。

ただし長寿・長生きなのは良いことですが、もっと大切なのはその中身・ですよね。

せっかく長生きしても寝たきりでは、充実した毎日を過ごすことには繋がりません。

そこで重要になってくるのが健康寿命です。

健康寿命とは、健康に問題なく日常生活ができる期間のことです。

自分の足で歩き、入浴や着替えなど身の回り生活を、人の助けを借りずに自立してできる状態を表します。

厚生労働省のデータを見てみると、いわゆる平均寿命と、健康寿命にはかなりの差があることがわかります。

平均寿命と健康寿命の差

厚生労働省 国民生活基礎調査より

健康寿命でない期間は男性で約9年、女性で約13年です。

この期間は人の助けを必要とし、要支援・介護あるいは寝たきりの状態であるということです。

最後まで健康で充実した人生を送るためには、このギャップを埋めることがとても大切になってきます。

では何が原因で、要介護や寝たきりになっているのでしょうか。

寝たきり人口の増加 4人に1人はロコモが原因

要支援・要介護になった原因

    厚生労働省 国民生活基礎調査より

同じく厚生労働省のデータを参照すると、要支援・要介護となって一人では自立した生活ができなくなった人の原因として、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患が19%、認知症が16%とあります。しかし一番多いのは運動器の障害で25%になります。

そうです。寝たきりの一番の原因は運動器の障害なのです。

そして驚くことにその割合は、寝たきり人口の約4人に1人となっています。

ではなぜこんなに運動器の障害を持った人が多いのでしょうか。

高齢化と技術の進歩による必然的状況

科学技術や医療技術の発達により、日本のみならず世界的にも人間の平均寿命は延びています。

ただその分、歳をとればとるほど、体を使う年数が増えれば増えるほど、どうしても足腰にガタがきやすいというのは誰でもイメージしやすいと思います。

今は平均寿命が延びたことで、このような高齢者がどんどん増えています。

そしてもう一つ、文明の発達・技術の進歩により乗り物が増え、車が普及し公共の交通機関も充実、果ては、最近では電動アシスト自転車なども出てきています。

一見すると便利な世の中で幸せそうですが、結果的に私たちはどんどん歩かなくなり、どんどん体を動かさなくなっています。

その結果、体の筋力が衰え、関節にも負担がかかり運動器に障害がでてきます。

ですから現代社会に生きていれば、こうなることはある程度必然的状況とも言えるわけです。

ラジオ体操すれば大丈夫だと勘違いしている人意外とが多い

高齢者の皆さんも、年とともに自分の体が動かなくなっていくことは、もちろん実感されています。

ですからそうならないように意識して、日頃から散歩をしたり運動をなさっている方もたくさんいらっしゃいます。

ただし、足腰が弱くなることを予防するうえでの知識がまだまだ不足しています。

例えば足腰を丈夫にするために、ラジオ体操や柔軟体操をしている人がいます。

こうしてしっかり体を動かしておけば、足腰が丈夫になり、転びにくく寝たきりにならないだろうと。

これは大きな間違いです。

このレベルのいわゆる体操をしているだけでは、足腰の運動の機能を維持することはできません。

もっと言うと足腰の筋力低下を防ぐことはできません。

家の中で歩き回っているから大丈夫!という人もいますが、足腰の筋力を保つためには階段を多用しているか、数キロ単位で歩いているぐらいでなければ、なかなか筋力を維持できません。

ですから家の中だけで生活している人や、歩くのは近所の買い物程度などの人は特に注意が必要です。

一番理想なのは、家の中でじっとしているのではなく、外に出かけてたくさん歩いたり、立っている時間を増やすことです。

そしてエレベーターやエスカレーターではなく階段も積極的に使えればなお良いです。

こうすることで健脚を保つことができるのです。

しかしながら毎日出かける時間もないし、家庭の事情でなかなか外に出られないという人もいるかと思います。

ですから家に居ながらでも、いかに下肢の筋力を落とさないように意識するか。これが健脚を維持し、健康寿命を長く保つ秘訣になります。

家でできる健脚を保つ為の運動


RICHBONEより引用

私が病院でよく入院患者さんにお勧めしている運動があります。

それは立ち座り運動です(やっていることはいわゆるスクワットと同じことですが、これをより安全に行うための運動です)。

この運動は椅子に座った状態から立ち上がり、また椅子に座るという単純な動作です。

こうすることで、主に膝を伸ばす大腿四頭筋と股関節を伸ばして体を起こす殿筋を鍛えることができます。

これらの筋肉で脚をしっかりと伸ばして踏ん張り、安定した立位を保つことができます。

足腰が弱り、すでに椅子から立ち上がるのが困難な人は、手で支えられる環境、家の中であれば食卓の椅子とテーブルなどを使って、テーブルに手をついて立ち上がるようにすれば
より楽に、安全に実施することが可能です。

回数は5-10回を1セットとして、1日の中で合計30回以上(5回なら6セット・10回なら3セット)を目標にしてください。

忘れないように、例えば食事の前か後に5回ずつで、毎食ごとに2セットずつできるようにしても良いと思います。

もちろんもっと多くできればその方がより筋力が付きますので、無理のない範囲でできるだけ実施することをお勧めします。

脚を伸ばしてしっかりと踏ん張ることができれば、歩いている時にも転びにくくなります。

しっかりと歩くためには、まずしっかりと立てることが大事です。

余裕がある人はバランス運動もできればさらに良い

日整会:ロコモパンフレットより引用

更に余裕がある人は、バランスの訓練もできるともっと良いでしょう。

家の中に立ったまま掴まるところがあれば、そこに掴まりながら片足を軽く浮かせます。

この状態で30秒から1分間ほど片足立ちの姿勢を保つ練習です。

こうすることで立位のバランス訓練になりますから、これもよろけたりしないよう転倒予防につながります。

難しい人は掴まる方向を向いて、両手をついてやってみても構いませんし、最初は1回の時間を短くしてもいいでしょう。

正しい知識をもって継続、習慣化することが大切

いかがでしょうか。ここまでの話をまとめます。

人生の最後まで自分の脚でしっかり歩いて充実した毎日を送るためには、平均寿命と健康寿命の差を埋める必要があります。

そして寝たきりになる一番の原因は運動器の障害で、もっと具体的に言えば、足腰が弱り動けなくなることです。

ですからこれを予防するためには活動的な毎日を過ごすことが大切なだけでなく、正しい知識をもって下肢の機能、特に筋力を保つことが大切です。

そのためには下肢の筋力を保つことができるぐらい、数キロ単位で歩く生活(解りやすく言えば6千から1万歩、或いは30分から1時間程度歩くでも良いです)、または下肢の筋力トレーニングが必要です。

そして下肢の筋トレの一番簡単な方法としてお勧めなのは、立ち座り運動です。

しっかり動ける人は階段の上り下りを積極的にやってもらっても構いません。

さらに余裕のある人はバランス運動もやってみてください。

主治医の許可を得て、無理のない範囲で行ってください

ただし、運動をするにあたって持病を抱えている人は注意が必要です!

主治医の先生に自分は運動をしても良いのか、どのくらいの運動負荷をかけても良いのか、しっかりと確認したうえで行ってください。

足腰が衰えてきたらそろそろを使おうかな、と考えるのはごく自然なことです。

ただし、諦める前に衰えた脚の機能を少しでも維持、あるいは改善することに意識を向けましょう。

実際に杖を使っていた患者さんが杖無しでも歩けるようになったという事例は多いですし、私自身もリハビリの仕事上で経験しています。

そしてそれは主に足の筋力に関係していると実感しています。

正しい知識をもって筋力トレーニングやバランストレーニングをすることが大切です。

そしてこれらを習慣化できることが、健康寿命を延ばすための最終的なゴールになります。

要介護や寝たきりになると自分が辛いだけでなく、家族や周囲の人にも負担がかかり問題となります。

貴方の愛する家族や友人の為にも、運動器の健康を保ちましょう。

誰もが望む「人生の最期まで自分の脚でしっかり歩く」ということ。

健康寿命をぐんぐん伸ばしてあげてください。

運動器の障害は若年化してきている

ちなみに今まで高齢者と表現してきましたが、実は年齢は関係ありません。

最近では運動器の障害が若年者でも起こってきています。

現代人は昔の人たちよりも歩かなくなり、足腰が弱くなる環境で生活しているから当然でしょう。

ですから足腰に不安がある方であれば、誰でも立ち座り運動をしていただいて構いません。

ただし関節症などの持病や関節に痛みのある方などは、一度主治医の先生に診てもらってからにしてくださいね。

 

この記事が何かの参考になれば幸いです。

 

 

 

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